待合室388

趣味の自戦記

2020/06/09_相振り飛車

 初対面の人が居飛車でくるか振り飛車でくるか、そんなことは判るはずもない、はずなのけれど、こちらが飛車を振りたいときに限って相手も飛車を振りたがっている、というのは珍しいことではない。
 飛車を振りたいという欲求は基本的に対抗形の振り飛車を持ちたいという欲求に由来するものなので、相振り飛車は「そうだったらいいのにな」ではなく「そうなったら仕方がない」という類のものになる。そういう招かれざる客であるからこそ、特に好きでもないにも関わらず「勝ちたい戦型」に分類されるのが先手番での相振り飛車だ。

 

☗自分
☖相手

☗7六歩 ☖3四歩 ☗6六歩 ☖3五歩
☗7七角 ☖3二飛 ☗8八飛 ☖3六歩
☗2八銀 ☖3四飛 ☗6八銀 ☖5二玉(第1図)

   【第1図は☖5二玉まで】

 先手が角道を閉じたので後手三間飛車にするのは有力な作戦のひとつ。こちらも向かい飛車にした。後手いきなり☖3六歩、全く思想が合わない今後を象徴しているようだった。
 相振りにおける三間飛車のメリットのひとつとして、相手に3筋(後手7筋)の歩を突かせないことが挙げられる。相振りは右矢倉に組んで作戦勝ち、という時代でもないけれど、相手の囲いに制限をかけている点は評価すべきだろう。
 この歩は互いに相手に取ってもらいたい歩なので放置するのは自然だが、次の☖3四飛と浮き飛車に構えるのがまた不自然で、先手に歩を取ってもらうまで他の指したい手を優先するのが普通だろうと思う。狙いがあるとすれば角頭の歩を掠め取るくらいなので、☖7四飛に☗6七銀と上がれるようにした銀上がりは、相手のペースに乗らないように心掛けた。
 第1図は中住まいに構える☖5二玉で、これはこちらの向かい飛車に反応したものだろう。

☗6七銀 ☖7二金 ☗8六歩 ☖1四歩
☗5八金 ☖3二金 ☗4八玉 ☖1三角
☗3八金(第2図)

   【第2図は☗3八金まで】

 銀の使い方を早々に決めるのも善し悪しかもしれないが、こちらの狙いは浮き飛車の圧迫と囲いの堅さによる作戦勝ち。後手はどうも大駒交換に強い形を作っているようだ。☖1四歩に対する☗5八金は、自分の中では☖1三角を先受けしたくらいの意味しかなかった。
 局後検討していると、☗5八金には☖1三角を半ば強制する意味があり、それ以外の手を指すと☗4六歩~☗4七金という形を作るのはどうか、と思いついた。
 しかし低ノード技巧2の検討で分かったことだが、本譜の指し手☖3二金に対して☗4六歩と指していると、☖3七歩成☗同銀☖同飛成☗同桂☖3六歩に☗3八歩と指していい勝負なようだ。自陣は乱され小駒を拾われるものの、もらった飛車の活用の目途が立たない。なるほど、と思った。
 第2図でこちらの金の使い方が相手に伝わったところ。金無双ではなく矢倉模様だ。

☖3三桂 ☗5六銀 ☖4二銀 ☗8五歩
☖8二銀 ☗9六歩 ☖1二香 ☗6五歩
☖3七歩成☗同 銀 ☖3六歩 ☗2八銀(第3図)

   【第3図は☗2八銀まで】

 こちらも向こうも自然な手を積み重ねているが、どうもこちらの方が得をしているような気のする交換が続いている。第3図の☗2八銀には時間を使って読みを入れた。☗2六銀には☖2四歩☗3五歩に☖5四飛や☖7四飛で☖2五歩が残っている分意外とでかしていない。☗4六銀が良かったようだが、そもそも後手から乱戦にされる展開を嫌っているので、☖4六同角☗同歩といった攻めがあり得るなら、たとえ成立していなくても手の流れから考えれば避けるのが自然だ。
 ☖4四歩や☖7四歩と指してくれれば、こちらも飛車先交換が出来るので、後手の指し手が難しい。

☖2四歩 ☗4六歩 ☖2五歩 ☗4七金左
☖2三金 ☗9五歩 ☖1五歩 ☗6六角
☖2四金 ☗3七歩 ☖同歩成 ☗同 銀
☖4四歩(第4図)

   【第4図は☖4四歩まで】

 第4図では☗3六歩と傷を消しておけば先手の囲いは十全の構えで、攻め手に困らないことも相俟って先手優勢と言って差し支えないだろう。本譜はそうならなかった。

☗8四歩 ☖4三銀 ☗8三歩成☖同 銀
☗8四歩 ☖9二銀 ☗7七桂 ☖3六歩
☗2八銀 ☖3五金(第5図)

   【第5図は☖3五金まで】

 歩を渡さない限り後手からの☖3六歩には強く☗同銀と取れるが、もう一歩あると☖3五歩で困る。そこで先に☗3六歩と押さえてから攻めに転じるのが正しい。にも拘わらず、本譜は先に☗8四歩としてしまったため、形勢が怪しくなってきた。先手は8筋を押し込んで☗7七桂、後手も☖3六歩~☖3五金と進出してきた。

☗6四歩 ☖同 歩 ☗5五銀 ☖5四歩
☗6四銀 ☖6三歩 ☗7五銀 ☖4六金
☗6五桂 ☖4七金 ☗同 金 ☖6二金
☗8三歩成☖4六金 ☗9二と ☖4七金
☗同 玉 ☖4六金 ☗5八玉 ☖4五桂(第6図)

   【第6図は☖4五桂まで】

 第5図で☗5八玉と指しておけば☖4五歩の攻めに☗同歩と強く取れる(4八の地点が空くので☗4八金と引ける)のでまだよかったようだ。
 本譜は攻め合い志向だったので☗6四歩。後手の☖6二金で形勢がこちらに戻った。代えて☖3一角が空振りに終わった攻めを放棄して5三の地点を受ける良い受けになっていたらしい。とはいえ先手やや指しやすいと思われる。
 途中☗9二とでは☗7二との方が厳しかったようだ(☖同金は☗5三金が厳しい。4六の金も質になっている)。
 後手も5七に殺到しつつ第6図へ。

☗5三金 ☖同 金 ☗8二飛成☖6二金
☗5三桂成☖同 玉 ☗4二銀 ☖同 玉
☗6二龍 ☖5二銀打(第7図)

   【第7図は☖5二銀打まで】

 飛車成りを王手で入れて調子が良いようだが☗4二銀が形勢を怪しくする手で、斜め駒がなく☗6二龍のときに☖3三玉と逃げられて意外と捕まらない。本譜は第7図☖5二銀打で、☗2三金と打てば挟撃形。問題は自玉と時間との兼ね合いで、第7図の時点で☗2三金が頭になかったこともあり自玉ばかりを見ていた。

☗6七玉 ☖5七金 ☗7七玉 ☖5六金
☗2三金 ☖6六金 ☗同 銀 ☖6八角
☗8七玉 ☖8六歩 ☗9六玉 ☖8七歩成(第8図)
☗5三金 ☖3一玉 ☗5一龍 ☖4一桂
☗5二龍 ☖2一玉 ☗1二金(投了図)
まで、105手で先手(自分)の勝ち

   【第8図は☖8七歩成まで】      【投了図は☗1二金まで】

 

 第8図からは簡単な詰み。
 今後は普通に居飛車を指そうと思った。